週末大冒険

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ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.143【東京都】谷中の下町の一角を巡る!老舗「みかどパン」終焉と古民家カフェの朝食!

山手線の駅で言えば、上野・鶯谷・日暮里・西日暮里。

 

そこいらから徒歩でアプローチできるのが、「谷中(やなか)」というエリアだ。

昭和テイストを醸し出す商店街の食べ歩きなどが名物で、TVのバラエティー番組などでもちょこちょこ出てくる。

 

今回はそんな谷中の中心スポットからは少し外れるが、2軒のお店をご紹介したい。

「みかどパン」と「カヤバ珈琲」だ。

 

ちなみに前者のみかどパンは、2021年10月下旬現在はすでに閉店してしまっている。

当日突然の閉店宣言。

それを知り、数日後にお店の外観だけでも目に焼き付けておきたいと慌てて駆け付けたのが、今回の谷中訪問の経緯だったのだ。

 

 

「みかどパン」

僕が谷中を訪れるワケ

 

僕がみかどパンの閉店を知ったのは、2021年10月11日のことであった。

相互フォローの方からのTwitterの情報で知った。

既に事後のことであった。

 

 

正面の超巨大な木の下に佇む小さな建物が、みかどパンだ。

 

ぶっちゃけ、僕はみかどパンに行ったことがない。

知識も少ないし、思い入れもそんなにはない。

 

しかし、存在は知っていたし下町谷中のシンボルの1つであるとも思っていた。

あまりTVを見ない僕が、偶然「アド街ック天国」の谷中の回をチラリと見たのはまだ1ヶ月も経っていない9月18日のことだ。

その中でもみかどパンは取り上げられていた。

 

そんな店が突然の閉店宣言をしたのは、僕の知る1日前の10月10日のことだった。

 

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みかどパン1

行こう。

 

お店は既に営業していないが、まだ建物はある。

店主のおばあちゃんが閉店する旨を記載した貼り紙だって、きっとまだ店頭に貼ってあるハズだ。

パンは買えないが、最後のメッセージを受け取り、そして谷中のシンボルだった店舗を見る資格くらい、僕にでもあるのではなかろうか。

 

…というわけで、閉店数日後の谷中にやってきた。

 

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みかどパン2

店舗はかなり奥まった路地にあるので、付近のコインパーキングに愛車を停めて歩く。

天候は曇り、ときどき雨がパラつくような寂しい天気だ。

しかし幸か不幸か、暑くも寒くもない快適な気温。

明日は土砂降りでメチャクチャ冷え込むそうなので、今日を選んだのだ。

 

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みかどパン3

ドロボウはここより先は侵入禁止である。

「じゃあここまでは良かったのですね?」と、まるでドロボウとの共存が実現している地区のように感じてしまった僕の心は汚れている。

しかし、なんとも言えない下町テイストを感じる看板だ。ステキだ。

 

さて、店舗までもう少しだ。

上の写真には、実はもう冒頭で引用した写真にもある超巨大樹が写っている。

あまりに変わり果てた姿であるが、写っている。

 

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みかどパン4

到着だ。

僕が勝手に信じ込む、"定番の構図"からみかどパンを撮影してみた。

 

天高く聳えるのが、例の巨大樹である「ヒマラヤ杉」だ。

そしてその下の建物がみかどパン。

 

 

最期のメッセージ

 

…というわけで、これが数日前に閉店したみかどパンの10月中旬現在の姿である。

 

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みかどパン5

経緯を知らないと、冒頭で引用した写真のトトロの木のように茂ったヒマラヤ杉とのギャップにビックリするだろう。

 

実はこのヒマラヤ杉、2019年の台風で枝が折れ、みかどパンを直撃してしまったのだ。

このままでは危険ということで、バッサリと枝葉を切られてしまったらしい。

 

確かに安全が第一だ。

しかし、願わくばモジャモジャだったヒマラヤ杉を一目でいいので見てみたかった。

 

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みかどパン6

三叉路のちょうど分岐点にある、みかどパン。

そのすぐ横のヒマラヤ杉。

 

ヒマラヤ杉は、ウワサによるともともとは鉢植えだったらしい。

それがどんどん成長し、このような姿になったのだとか。

樹齢は100年だそうだ。

100年でここまで成長するのは、すごいな。そして景観重要樹木にも登録されている。

 

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みかどパン7

そして、レトロな店舗。

レトロ風に仕上げたわけでもなく、レトロな建物をリノベーションしたけでもない。

長年使い込んだからこそ醸し出せる、圧巻の容姿である。

 

どんなパンがどのように陳列されていて、どういう営業をしていたのか。

残念ながらそれを僕が説明することはできない。知らないから。

 

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みかどパン8

僕は店舗を見上げて想像する。

 

ここの店主さんは、87歳のおばあちゃんだったらしい。

創業は昭和2年(1927年)で、甘味処としてのスタートであった。

付近には「川端康成」などの文化人もちらほら住んでいて、そしてさらに周辺一帯はお寺なので参拝客も多い。

下町なので住んでいる人も多いし、住民同士の交流も多かったろう。

 

そんな人たちが甘味処として、そして少し時代が流れてからはパン屋さんとして、ここに通ったことだろう。

 

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みかどパン9

扉には、ヒマラヤケーキサンドのチラシが貼ってあった。

きっとヒマラヤ杉をモチーフにしたものだろう。

近年はパンはあまり売らず、ラスクやクッキーが中心であったと聞いている。

 

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みかどパン10

店頭には1枚の貼り紙がある。

うん、実はこれを見たかったのだ。まだ貼られていて良かった。

 

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みかどパン11

10月10日付けのメッセージだ。

この貼り紙により、Web上をみかどパン閉店のニュースが駆け巡ったらしい。

 

高齢のため、と書いてある。

87歳まで頑張ってきたのだから、本当にご苦労様・ありがとうとしか言いようがない。

…しかし、閉店の理由はそれだけなのだろうか?

 

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みかどパン12

Web上の情報であり真偽はどこまでなのか不明だが、近年はみかどパンに対し、立ち退きの話が進んでいたらしい。

ここを更地にし、マンションなど再開発の計画もあるそうなのだ。

 

…そうなると、開店・閉店レベルの問題ではない。

どうやらWeb上の情報によると、おばあちゃんは10月10日に既にここを去ってしまったそうだ。

 

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みかどパン13

このままだと、建物も取り壊されることとなるのだろう。

みかどパンのために存在し、みかどパンとして存在していた建物。

主がいなくなってしまっては、取り壊すしかないであろうことはこの外観を見れば想像がつく。

 

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みかどパン14

僕にとっては最初で最後のみかどパン。

記録と記憶に焼き付けよう。

 

お店の周囲を回っていると、やってきた人が貼り紙の存在に気付き、「えーっ!閉店だって!!」とショックを受けていた。

誰にとっても突然の事件。

 

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みかどパン15

更地になったら、このヒマラヤ杉もなくなるのだろうか?

どうみても厄介な場所に生えている木だ。今後が気がかりだ。

 

町は、姿を変えるのものだ。

時代も流れるものだ。

 

どんな店にもどんな家にもどんな路地にも、きっと思い出は詰まっている。

しかし、いつかサヨナラすることも必要なのだと思う。

 

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みかどパン16

この光景を、一目でも見れて良かった。

サヨナラみかどパン。

 

 

「カヤバ珈琲」

古民家は人気だ

 

さて、なんか湿っぽい感じにはしたくはないので、もう一店舗ご紹介する。

みかどパンから徒歩5分ほどの場所にあるカヤバ珈琲だ。

 

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カヤバ珈琲1

ここはとんでもない人気だ。

食べログではコメント400件近くあり、写真掲載は2000点を超えるほどだ。

 

結論、週末はとても混む。

ランチ時などは数10分~1時間以上と聞いている。

しかも今はコロナ禍だから並ぶこともできず、待ち時間は近くを徘徊するようなイメージだと聞いている。

 

とりあえず、朝の8:00開店だというので8:30ごろに到着した。

この時間であればいけるだろう、と。

 

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カヤバ珈琲2

建物を見上げる。圧巻の木造だ。

歴史はガチで古い。

 

1916年(大正6年)に建てられた町家だ。

1938年に「榧場(かやば)さん」が喫茶店を始め、70年間ご家族で経営するも、2006年に閉店。

しかしその3年後の2009年、有志により改装された新店舗として復活を遂げたのだ。

 

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カヤバ珈琲3

この谷中の町の歴史を100年以上見守って来た建物だ。

この建物ができた頃には、さっきのヒマラヤ杉ですら誕生していなかったのだ。すごすぎるぜ、カヤバ珈琲。

 

こんな建物の中でご飯を食べれるなんて、初恋かってくらいのトキメキだ。

すこぶる曇天だが、きらめいて見える。

 

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カヤバ珈琲4

中に入ってみると、1階はこじゃれた空間であった。

カウンターがあり、そしてちょっとレトロ調のテーブル席が16席分ほどあったと思う。

しかし、朝8時台なのにもうすべてのテーブル席が埋まっていた。

 

「しまった、この時間でも遅すぎたのか!?」って思ったら、2階を案内された。

そっか、2階もあるのか、よかった。

 

こうして店内に足を踏み入れる。

 

 

座敷席とサンドイッチ

 

2階へは、階段下で靴を脱いでから上がる形式であった。

階段はとんでもなく急だ。昔の日本家屋の名残で、転げ落ちそうな傾斜であった。

 

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カヤバ珈琲5

そして2階席だ。

座敷席で、全部で5卓。とても広々とした空間が広がっていた。

あ、ここ素敵。

 

この時点で、先客は窓際の1組のみであった。

しかし、僕の直後にぱたぱたとお客さんが続き、10分後には満席になった。

行くのであれば、9:00までが良いのだろう。

 

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カヤバ珈琲6

さて、ここで朝ごはんを食べる。

たまごサンドが名物だそうだから、それは食べようと思っている。

他にはどのようなものがあるだろうか?

 

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カヤバ珈琲7

モーニングメニューは8:00~11:00。

名物たまごサンドは1000円だ。

 

それと、クロックムッシュが気になる。

『きのこと玉ねぎの旨みととろけたチーズ、ハム。』と、微妙にボキャブラリーが心配になる文章構成なのも、また良い。

お値段1400円でなかなかだが、チャレンジする価値がある。

 

さらにコーヒーだ。

僕は1日3杯ほどのコーヒーがないと生きていけない。

 

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カヤバ珈琲8

まずはコーヒー来た。

ま、「先に欲しい。すぐにでも欲しい。なぜならコーヒー好きだからだ。」的なニュアンスでオーダーしたからなのだが。

左の木の器には、冷えたおしぼりがムギュッと詰まっていた。

 

コーヒーは酸味が強めで爽やか。

すっきりしないこの朝の天気を彩ってくれるような味わいであった。

 

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カヤバ珈琲9

たまごサンドも比較的すぐに来た。

ライ麦のようないい色のパンだ。どうやら最近パンの種類を変えたらしい。食べログなどを見ると白いパンであることが多いだろう。

 

しっかりもっちりとした食感のパンに、たまご焼きのようなたまごが挟んである。このタイプは関西で多く見られるんだっけかね。

たまごはふんわり柔らか。マヨネーズが効いていて食欲も進む。

 

添えられているのは、野菜がゴロゴロしているサラダと、グレープフルーツジュースだ。

メニューはワンプレートであり、ジュースかスープがくっついてくるのだ。

 

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カヤバ珈琲10

クロックムッシュも登場。

メニューが出てくるまでの時間、結構早くてラッキーだった。

僕の後に来た人はそれなりに待っていた。

 

表面は焼いてあり、かなり固め。

中にはハムとチーズとキノコだ。なんというナイスなコラボレーション。うますぎる。

 

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カヤバ珈琲11

1時間以上ゆっくりと過ごした。

2階はやばい。このまま住めるくらいの居心地の良さだ。

 

そして、サンドイッチは思った以上にボリューミーで満腹だ。

これはヤバいのだ。谷中ぎんざでの食べ歩きに大いに支障をきたす。

 

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カヤバ珈琲12

そして床の間も素敵だ。

お客さんがいるのでなかなか内部の撮影はできなかったが、窓際の席も素敵であった。

 

退店したのは10:00頃。

新規で入ろうとしている人が「もう予約でいっぱいで…」と店頭で断られていた。

その30分後、そしてさらに昼過ぎくらいにもこの店の前を通ったが、同様に店内に入れずに絶望している人を見かけた。

 

早めに来て正解であったな。つくづくそう思った。

 

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カヤバ珈琲13

…残る店、消える店。

 

東京下町にはいろんな店がある。

しかし、決して残った店が勝ち組というわけでなく、消えた店が負け組ではないのだろう。

 

ゆっくりと流れる時代の渦の中で、店も僕らも生きている。

入れたのもご縁、閉店に間に合わなかったのもまたご縁だ。

 

さて、今日はこのあとどのようなご縁が待っているだろうか?

まだ1日は始まったばかりだ。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: カヤバ珈琲
  • 住所: 東京都台東区谷中6-1-29
  • 料金: たまごサンド¥1000他
  • 駐車場: なし。付近のコインパーキング使用のこと
  • 時間: 8:00~17:00(土日祝は18:00まで)