シトシト降る雨の中。
1人車中泊のドライブをしている僕は、辿り着いた静かな「湯原温泉」でのんびりと共同浴場に入り、そしてカサをさして温泉街を散策した。
晴れていたらもっとステキだったのかもしれない。
しかし、世の中には晴れの日もあれば雨の日もある。
雨を楽しめないということは、人生を半分くらい損するかもしれない。
だから、前を向こうじゃないか。
2021年9月現在、コロナ禍で緊急事態宣言がバシバシ出されている上、週末やお盆や大型連休を目掛けて台風が来ている。
シルバーウィークの前半3連休も後半は行楽日和となったもの、あわや台風で丸潰れかと危惧した方も多かったろう。
人生ハードモードだ。
このブログ【週末大冒険】においても、なるべく晴れの綺麗な写真を出すようには心がけている。
しかし、今回は雨の風景を少しお届けしたいと考えたのだ。
真賀温泉の共同浴場
僕が岡山県の山間部に足を向けると、大概天気が崩れる。
「運が悪いよな」って思ってしまいそうになるが、逆に岡山県山間部の気持ちになって考えると、「YAMAには雨の日の情景を見てほしい」となるのだろう。
よーし、ザーザー降りだ、ありがとう岡山。
こんな天気ではあるが、つい今しがた遊歩道を歩いてとある滝までアプローチしていたりしたので、体が濡れて冷えている。
ならば温泉なのだ。
僕は晴れの日の日中に温泉にのんびり入るのはちょっともったいないと感じてしまうが、雨の日であれば「それも良し」って感じる。
雨の日は、温泉との出会える。これもステキだ。
こんな看板が出てきた。
まずは右の邪悪な日の丸の中に、デロリとサンショウウオが描かれているのが気になるが、これについては後述しよう。
中国地方で有名な湯原温泉。
その湯原温泉は、「下湯原温泉」・「足温泉」・「真賀温泉」・「郷緑温泉」と共に湯原温泉郷と呼ばれている。
その一番南、つまり今の僕から一番近い位置にあるのが真賀(まが)温泉だ。
なんだそれ、面白そうじゃないか。近いし面白いなら、そこ入ってみよう。
看板によればここからわずか300mだし。
こうして到着した、真賀温泉。
山肌に張り付くように昭和レトロな建造物がひしめいている。最高か。
左上の看板に書いてある「真賀温泉→」っていうのは、共同浴場である「真賀温泉館」っていうのを指しているらしい。
僕の狙いはそこだ。車を降りて石段を登る。
もう笑えるくらいに雨ザーザーだ。
ただ、距離は短い。さっき見上げていた看板の建物がまさに共同浴場であり、ちょっと迂回しつつもそこの3階にある入口に向かうイメージだ。
赤い傘がオシャレな入口だ。
もうちょっと引きで撮ればよかったが、味わい深い木造の茶色い建物であった。
期待が高まるたたずまいだ。
もうこの手書きチックな案内板だけで、僕の心はイチコロだ。
しかし、22:00まで営業しているのか、すごいな。
こういう共同浴場って夕方くらいには終わってしまうイメージだったが。
ガラスのスライドドアをガラリと開けて入ると、受付がある。
その上に木製の料金表があるのだが、焦げ茶色に変色していてさ、墨で書いてある内容がほとんど読めない。
とりあえずなんとか読めたし一番普通であろう"普通湯"をオーダーした。
150円だった。なんという安さ。
こんな値段で温泉に入れて、本当にありがたい。
こんな写真しか撮っていなくって申し訳ない。
人がチラホラいたし、とても狭い施設内なのでこれが限界であった。
ちょっと記憶の中から間取りを掘り起こしてみよう。
うんうん、確かこんな感じであった。
狭いの。
そして入口は暖簾もなくってこれまたわからなくて、受付のおじいちゃんに教えてもらった。
浴場は仄暗くてシャワーとか石鹸とかそういうものはなくて、蛇口が1つと湯船のみ。
5人くらい入るとギュウギュウになりそうなその湯船に、みんな無言でひたすら浸かっている。
湯船は深く、そして温度はとてもぬるい。ゆっくり浸かっていられる温度だ。
僕してはかなり長めに30分ほど浸かり、そしてお風呂から出る。
ぬるかったけど湯上りはポカポカになった。
さすが温泉だって思った。
「千と千尋」のモデルの旅館
さらに10㎞ほど車を走らせ、湯原温泉の中心地へとやって来た。
事前知識はほとんどゼロで来た。
駐車場の場所も知らないのでとりあえず道なりに温泉街の中をズンズン進み、一番奥の河原に無料の広大な駐車場があるのを発見。
そこに愛車を停めた。
ちょっと温泉街方面に徒歩で引き返し、そして振り返って撮った写真がこれだ。
温泉街はこの「旭川」という川沿いに立ち並んでいる。
そしてこの温泉街の特徴は2つ。
1つはすぐ背後の巨大なダムが聳えていることだ。
「湯原ダム」というらしい。
この立地とこの景観、すごいな。「進撃の巨人」みたいだ。
もう1つは、2つ上の全景の写真を撮った後に気付いて「うわー、ごめんなさい!」ってなったんだけど、川原にすんごいワイルドな露天風呂があるという点だ。
無料の混浴露天温泉で、「砂噴き湯:砂湯」。
2021年現在は水着着用が推奨であり、女性については旅館等で湯浴み着を借りることもできるらしい。
このとき僕が見た限りでは、全員ハダカだったけどな。この頃はまだオープンだったのかな。
よーし、時間があったらあとで僕も入ってみようかなぁ。
温泉街、渋いな。
レトロ好きな僕としてはときめく。
しかし週末なのに雨のためか、お客さんがほとんど歩いていなくって寂しい。
温泉まんじゅうを店頭で売っているお店もあったが、なんだか気持ちが乗らなくってそのままブラブラと歩き続ける。
僕には、この温泉に来た目的がいくつかある。
前述の通り事前情報はほぼゼロであるが、それでも知っていたことがあり、目的にしてきた。
それがこれだ。「油屋」という旅館。
ジブリ映画の「千と千尋の神隠し」をご存じの方であればおわかりと思うが、映画には同名の湯屋が登場し、そこが物語の大半の舞台となる。
ここもその湯屋のモデルの1つといわれているのだ。
だからこそ、僕はここに来てみたかった。
いっこうに止まない雨の中、カサをさして油屋を見上げる。
この宿は1688年(元禄元年)創業であり、この地でもう330年ほども営業しているのだ。
歴史の重みがハンパない。
立ち寄り湯や食事も可能なのだが、さっきの砂湯も入りたいし、ランチは先ほど食べたばかりだし、そもそも僕なんかが1人でここにフラリと入る度胸もない。
だから見上げるだけとしよう。
そもそも2021年現在、立ち寄り湯は1100円する。
どうしてもさっきの共同浴場の150円と比べてしまい、興味本位では少々イタい金額だと結論付けた。
いつかゆっくり宿泊で来れる機会があったらいいなって思う。
あの「油」の旗がステキだ。海賊旗みたいだ。
あと、「千と千尋の神隠しのモデルとなった湯屋はそこ以外にも…」っていう声が聞こえて来そうなので、追加でご紹介しよう。
僕の知る限りでは、これらを加えた4軒がモデルと言われている。
僕もここに至るまでに上記全ての温泉街で宿泊している。
つまり湯原温泉がラストだったのだ。だから来たかったのだ。
(仮に他にもモデルがあったのであれば、教えてほしい)
ちょっと不思議な体験を…
僕はさらに雨の温泉街を歩いた。
先ほど記載の通り、まだ目的があったからだ。
2つある。
温泉街は相変わらず静まり返っていたが、ある意味これは好都合であった。
これは油屋近くの路地に入って撮影したものだ。
赤い橋と木造建築とのコントラストが渋いなって思って撮影した。
これはグルグル温泉街を巡っているときに発見した、少し古びた温泉街のMAPである。
その他の目的地の場所が掲載されているか知りたかったのだ。
「うーんやっぱり載ってないな。古さが足りないのかもしれないな。あと、公序良俗的な問題もあるのかもしれないな、ふんふん。」って呟いた。
そしてその後、あれこれ頭を悩ませつつも、2つともなんとか発見できた。
この記事内では執筆せず、いずれ機会があれば…としたいが、ほんの少しだけ触れてみよう。
それは、40年前の遺構であった。
写真右端のポールを発見したことで、一気に活路が開けた。
足元ドロドロビシャビシャになったけどな。せっかくお風呂で綺麗になったのに。
もう1つは、これまた既に滅びたスポットであった。
息絶えたのは、平成の初期頃であろうか?
オトナの階段、登ってやった。
閑話休題。
最後に、湯原温泉の片隅で見たものをご紹介する。
倉庫に格納された、巨大なサンショウウオの乗った山車。
それがいくつもある。
「うわぁ、ビックリした―!!」ってなった。
これは苦手な人は苦手なビジュアルと大きさであろう。
体長5mはゆうにあるぞ。リアルだし。
どうやらこれ、"はんざき祭り"っていう祭りに使われる山車らしい。
8月に実施するんだって。見てみたいような、見たくないような…。
はんざきっていうのは、オオサンショウウオのこと。
この地域独時の呼び方なんだって。
その名の由来は、「半分に裂いても生きているから」。
いや、裂くな。
山間部で水が綺麗な渓流も多く、オオサンショウウオが生息しているのだ。
だから、冒頭でご紹介した看板にもオオサンショウウオが描かれていたのだ。
近くにはオオサンショウウオを見れる「はんざきセンター」もある。
あと、そんな綺麗な川だからホタルも生息しているらしい。
なんとステキなことだ。
こうして岡山の山間部に降る雨が綺麗だから、こういった生物が今も元気に生息するし、川岸に温泉街が形成されて賑わったのかもしれない。
雨、ありがたいじゃないか。
そう感謝して、僕は相変わらずザーザー降る湯原温泉を後にする。
…いや、本当は晴れの方が3倍好きなんだけどな!
ちょっと無理して感謝しちまったよ!
そして、あれこれ探索していたら砂湯に入る時間が無くなったけどな!
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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