人里離れた山奥。森の中の断崖絶壁。
その崖にポッカリと口を開けた暗い洞窟。
洞窟には、無数のガイコツがゴロゴロと。そりゃあもうゴロゴロと。
恐る恐る、そのガイコツを掻き分けながら洞窟の奥へと進む。
一番奥に何かある…。あれはなんだ?
奥には小さな祭壇がポツンと置かれていた…。
ヒ、ヒエェェェーーッ!!
…ホラーでしょ?オカルトでしょ?
マジあるんだ、そういう場所が大分県に。
以前一度行ったんだけど、写真が手ブレしちゃったからもう一度行く、大分へ。
アプローチからハードモード
道が狭いねぇ。心細いねぇ。道も心も細いねぇ…。
そんなことを考えながら進む。
ちなみにね、ここへの行き方を詳細に記載しているサイトはかなり少なくってね。一般人はまず行かないようなスポット。
初回訪問のときなんて、本当に情報少なくって行くの大変だったから。
「じゃあ2回目である今回は余裕だね」って思われるかもしれないけど、2回目は2回目で道に迷ったからよろしくね。
こんな狭い道 でUターンしたんだよ。(←ちょっと自慢気)
狭いわ、道は舗装されていないわで。
車体も「ガゴゴゴゴゴ…!」って振動するから、壊れそうで不安。
ガンバレ、昭和の車!
僕の記憶が確かであれば、もうすぐ目的地だからな!
苦労の末に目的地に着いたら着いたで、駐車場なんてない。
車1台どうにか停められるような路肩があるから、そこに車体をねじ込むのみ。
さぁ着いたぜ、恐怖の神社、「白鹿権現(ししごんげん)」。
洞窟までのロッククライミング
さて、市街地から軽く1時間ほどかかった気持ちだけど、フルコースに例えれば、ここまではまだオードブル。
僕は車から、このときのために持参した軍手を取り出す。
来たぜ、2度目の白鹿権現!まずは細いコンクリの橋で、渓流の対岸に渡る。
川を渡って振り返ると、僕の愛車の"パオ"がつぶらな瞳で心配そうにこっち見てる。
「ご主人、だいじょぶー??」みたいな顔をしてる。
マジでクソかわいいな、アイツ。
ちょっと留守番しててねー。
そんで、ここが一番のミソな。
悪質な分岐あるけど、誘導されちゃいそうな方にいざなわれると、違う世界に行っちゃうからな。
大サービスで現地のマップをご紹介。
正解は、右だよ。
かつての僕は普通に左に行っちゃって、社の前で「ありがたやー」みたいな感じで参拝して、そのままズンズン明後日の方向にフェードアウトしていったの。
いつまでも目的地に着かないし、遠くから猟銃の発砲音とか聞こえてきて焦ったの。
あのときは、すごく無駄な時間を費やしたものだ。
今回は道を知っているので、半分獣道みたいな右へ行く。
足元がツルツルの岩とかで、すごく歩きづらい。
でも、そんな歩きづらい獣道でも感謝の気持ちを忘れてはならない。
なぜなら、このあと道すらなくなるからだ。
本能レベルで察知できるヤベーものが目に入る。
絶壁とチェーン。
崖の傾斜は70度といったところか。日頃運動なんて一切していないから、なかなかヘビーなんだけど、登る。
ちなみに今回、さらに難易度を上げている要素がある。
それは三脚だ。現地で三脚を設置して写真を撮りたい。なぜなら冒頭で書いた通り、前回は写真が手ブレしてしまったから。
でも、三脚を持っているということは、片手がふさがっている。
片手でロッククライミング。ムチャだ。
右手で三脚、左手でチェーン。だから上体がプランプランして崖から離脱しかけている。落ちたらきっと痛いと思う。
チェーンを登り切ったと思ったら、おかわりが出てくる。
先が見えない。まだまだ上る。50mくらいロッククライミング。
ビルで例えると15階とか、それ以上か。
こんな先にある白鹿権現、ハンパない。
ズボンは無残にもドロドロとなりました旨、ご報告いたします。
崖がえぐれてる部分に到着。ここで久々に二足歩行のありがたみを感じることが可能。
しかし、油断めされるな。
足元はゴツゴツ。そして泥岩っていうのかな、メッチャ滑るぞ。そしてこのエリアは崖がえぐれてやや平面とはいえ、崖下に向かってちょっと傾いているぞ。
なので、僕もときどきバランスを取るために片手を地面について進む。
行く手に洞窟が見えていた…。
来るぞ、ガイコツ。出るぞ、ガイコツ。
戦慄のガイコツ洞窟
これが洞窟の入り口だ。
奥のほうに小さな祠が2つあるんだ。そこに至るまでの、いわば参道に当たる部分にガイコツがギッチリ。
むしろガイコツを掻き分けるかのように参道が設置されている。
このガイコツは、大半がイノシシのもの。
そして、柿の種に対するピーナッツくらいの割合でシカの骨が入っている。
それがビッシリと、マジに数100レベルで洞窟内に積まれている。
新しいガイコツはまだ白いんだけど、古そうなものは茶色くなったり緑になったり。
一体いつからここに置かれているんだろう。
このゾーンは新しいな。額に「令和元年」と書かれたガイコツもいる。
さて、この白鹿権現。
どうやら聞くところによるとここは豊猟祈願をする祠。
猟師さんは仕留めたイノシシやシカの頭蓋骨をここに持ってきて捧げ、今後の豊猟を願うそうなのだ。
ってことは、ここいらは猟が盛んなのだね、きっと。
イノシシもシカも出るのだね。そしてそれをハンティングする猟師さんも。
そういえば、猟銃の銃声も聞こえていたな、と納得する。
最後に洞窟最深部の祠まで行く。
あー、ブレた。三脚使うのを忘れたよ。せっかく大変な思いをしてここまで三脚を運んできたのに。帰宅してから気付いちゃった。
じゃあ、またここまで行く?
いや、もうしばらくいいや。シンドいから。
…というわけで、白鹿権現とは猟師さんが豊猟を祈願する社であった。
普段我々が何気なく食べている動物の肉。いずれももともとはかけがえのない命。洞窟のガイコツたちだって、少し前はブヒブヒ言いながら楽しそうに野山を駆け回っていたに違いない。
動物たちの死が、僕らの命になる。
僕らはこれからもきっと動物の命を求めるのだろうが、その動物たちに感謝の気持ちを忘れてはならない。
祠に頭を下げ、僕は再び崖をおりる。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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