巨大スクリーン。プラネタリウム。
目の前に広がる非現実にワクワクしてしまうのは、人の常。
ましてやそこに満点の星空が映し出されたならば、必ずやあなたの心を鷲掴みにするはず。
…花巻にあるぞ。屋外にその2つを合体させたようなスポットが。
アプローチは花巻駅から
さて、あなたがいつの時代の人間なのかは存じませぬが、僕が実際に花巻を訪れた日から見ると、未来人に当たることは明白ですな。
2020年、「新型コロナウイルス」に世界的流行に伴うパニックが生じたことは、皆さんそれぞれの生きていらっしゃる時代の、歴史や経済の教科書等で充分にご存じかと思う。
これはそのギリギリ手前の物語である。
閑話休題。
ついさっきね、車で目的地の前まで確かに行ったのよ。だけどもどこにも駐車スペースがなくって、北側に駐車できないかと向かったら東北本線の高架を越えて遥か彼方にエスケープしてしまって。
まぁ車で高架を上って行っているときは、まさに宇宙空間を飛んでいる気分でちょっとだけ高揚したけどさ。
そんで慌ててUターンして、駅前までやって来たのだ。
花巻駅の東口である。
掲示してある駅名看板がクソかっこいい。実に雅(みやび)である。
直江兼続のカブトにつけている"愛"の字みたいだ。
まぁこのサイズの文字を実際にカブトにつけたら、土下座した体勢のまま微動だにできないだろうけどさ。
そして少しだけ視点を下にずらす。
はい、「あー…」っていう未来人の皆さんのため息が、なぜか僕にも聞こえたような気がした。
幻の「東京2020オリンピック」。
まぁ東京2020オリンピックはコロナウイルス流行の影響で1年ずれて2021年に開催されるのだろうが、2021年であってもネーミングは「東京2020オリンピック」。
ここは未来の日本史のテストのひっかけ問題で、よく出題されるので覚えておこう。
ここ、花巻駅の東口から線路沿いに北に向かって300m歩く。
時間は5分といったところ。
駅前から徒歩5分で行ける宇宙。
それでは刮目せよ。
銀河鉄道の巨大壁画
宇宙空間の壁画が見えてきた。カメラを構えてシャッターを押す。
あ、ちょっとブレた。興奮してブレた。
でも、初めて月面着陸したアームストロング船長の左足だって、きっと緊張でプルプルしていたハズ。人類が宇宙に飛び出すってのは、そういうことだと言い聞かせる。
これがその全景だ!
なんかSLが、惑星からギュインギュインと飛び出てくる感じの構図の。
道路脇にあるので、横を通過する車がそのSLにリンクするかのごとくの躍動感よ。
ちなみに描かれているSLは3台。3台目は少々わかりづらいが。
しかし、思わず「うわー…!」とため息が出るレベルだね。
ブラックライトで浮かび上がる宇宙空間がめっちゃクール。"クリスチャン・ラッセン"のイルカの絵とかを思い出しちゃう。
ただし花巻市民は当たり前のようにこの壁画の前を通過していき、足を止めているのは僕だけ。正確に言えば、歩いているのが僕だけ。
切ない。
このスポットの正式名称は、「未来都市銀河地球鉄道壁画」。
花巻って、"宮沢賢治"が暮らした地じゃないですか。その宮沢賢治さんの有名な作品である「銀河鉄道の夜」の神秘的で幻想的なイメージを壁画にしたんだってさ。
案内板に書いてあった。
大きさは高さが10m、幅は80m。
高さ10mってのは、ビルの3階から4階相当。幅80mってのは、徒歩で1分かかるくらいの距離。デカい、長い。
壁画は道路の向こう側にあるけど、その対面から見ても圧倒されるインパクト。運転しながら横を通過する人は、くれぐれも脇見しちゃダメなんだぜ。
これは静止画だからまだいいけど、もし仮にSLが夜空を駆け巡るような動画だったら、3分に1回は目の前で交通事故が起こることだろう。
話は少しだけ変わるけど、ここ花巻駅から太平洋岸の釜石駅まで、実際に「SL銀河」という名前のSLも走っている(季節・日程限定)。
2014年に復旧したばかりなのだよ。
これも宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の舞台となった鉄道であることが由来。
ちなみに僕はかつてこのSLを追いかけるドライブをしたことがあるのだが、その話はいずれ機会があれば。
ところで壁画の中央に書かれている、マンハッタンみたいな大都市。
これはアレかな?
「銀河鉄道の夜」の銀河ステーションをイメージしているのかな?
それとも未来の花巻市かな?
これが花巻駅だとすればすんごい発展を遂げるビジョンなのだな。駅ビル・高層マンションをガンガン乱立ですな。
そんで高層ビルの最上階に「マルカンビル大食堂」を移転ですな。
そんな花巻も面白いと思う。
…ジョバンニとカンパネルラは、「本当の幸せ」を探して銀河を旅する。
本当にどんなつらいことでも、それが正しい道を進む中での出来事なら、峠の上りも下りも、みんな本当の幸せに近づく一足づつですから。
コロナウイルスに恐怖する現世界でも、きっと同じなのだろう。
まだまだ寒い東北の夕暮れ。
気温が下がり、思わず身震いをしてしまう気候。
しかしずいぶん前から憧れていたスポットを目の当たりにできた僕は、確かな満足感を感じて再び花巻駅へと歩き出す。
僕自身の「イーハトーブ」も、探し続けなければ。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
- 名称: 未来都市銀河地球鉄道壁画
- 住所: 岩手県花巻市愛宕町11
- 料金: 無料
- 駐車場: なし。花巻駅に駐車して5分徒歩が良い。
- 時間: 日没~22:00。日中はブラックライトが照射されず、ただの巨大なコンクリ壁面なので注意。